建築金物とは?―材質や加工の基礎からプロのこだわりまで―

建物を支える“縁の下の力持ち”とも言える存在、それが**建築金物(けんちくかなもの)**です。ドアの丁番(ちょうつがい)や手すりの金具、外壁の固定金具、屋根材を留めるビスやプレートなど、私たちの暮らしの至るところに使用されています。一見目立たない部材ですが、建築の安全性や耐久性、さらには見た目の美しさにも大きく関わる非常に重要なパーツです。

今回は、そんな建築金物の「材質」や「加工」について、専門的な内容を交えながら、わかりやすく解説していきます。


建築金物の役割

建築金物の主な役割は、次の3つに大別されます。

  1. 構造的役割(建物の安定性を保つ)
     例:柱と梁をつなぐ金物、筋交いプレート、アンカーボルト

  2. 機能的役割(開閉や動作など)
     例:丁番、スライドレール、取手、クローザー

  3. 装飾的役割(見た目や意匠)
     例:アイアンの手すり、化粧ビス、金属製モール

これらの金物は、建物の内部・外部問わず、多岐にわたる用途で使用されます。


建築金物の材質について

建築金物に使われる主な素材は、以下のような金属です。

1. ステンレス鋼(SUS)

耐久性、耐食性に優れており、屋外や水回りでの使用に適しています。特にSUS304やSUS316は、長期的な使用にも耐えうる優秀な材質です。サビに強いという特性から、ビルの外装部材や、キッチン金物などでも多用されています。

2. 亜鉛メッキ鋼板(ZAM、SGCCなど)

鋼板に亜鉛やアルミをめっき加工することで、コストを抑えつつある程度の防錆性能を持たせたものです。屋根下地や土台水切り、外壁の支持金物などによく使われます。安価で加工しやすいため、量産部材として重宝されています。

3. アルミニウム合金

軽量で、酸化によるサビに強いという特長を持ちます。窓枠や手すり、装飾部材などに使われることが多く、デザイン性にも優れた素材です。ただし、鉄に比べると強度が低いため、用途は限定的です。

4. 真鍮(しんちゅう)・銅合金

高級感のある見た目で、ドアノブや装飾金物に使われます。加工性に優れ、細かな意匠も再現可能ですが、コストが高く、経年によって緑青(ろくしょう)と呼ばれる変色が起こります。


加工技術のいろいろ

建築金物は、用途や意匠に応じてさまざまな加工が施されます。代表的な加工方法には次のようなものがあります。

曲げ加工(ベンダー加工)

薄い金属板を指定の角度に曲げる加工です。外壁の水切りや笠木、幕板などの製作に多用されます。曲げ角度の精度によって、仕上がりの美しさや現場での納まりが大きく変わってきます。

切断・せん断加工

金属板やアングルなどを必要なサイズにカットする加工。シャーリングやレーザー、プラズマ切断などがあります。特にレーザー切断は、精密な形状に対応できるため、複雑な意匠金物にも使われます。

溶接加工

2つ以上の金属部材を一体化させるための技術です。現場溶接や工場溶接があり、強度を求められる構造金物に欠かせません。仕上がりの美しさも職人の腕の見せどころです。

表面処理(メッキ・塗装・ヘアライン仕上げなど)

耐久性と見た目を両立させるために、各種の表面処理が施されます。たとえばステンレスにヘアライン仕上げを加えると、落ち着いた質感で高級感のある意匠に仕上がります。亜鉛メッキはサビ防止として広く使われています。


金物の品質が建物の「寿命」を左右する

建築金物は消耗品ではありません。一度設置すれば、10年、20年、それ以上も使用されることがほとんどです。だからこそ、材質の選定や加工精度が非常に重要になります。粗悪な金物は、数年で錆びたり、機能不全を起こしたりして、建物全体の劣化を早めてしまうリスクもあります。

特に近年の建築では、耐震性・耐風性・長寿命化が重視されているため、高品質な建築金物の採用は“安心安全な建物づくり”の基礎であるともいえるでしょう。


まとめ

建築金物は、普段はあまり意識されない存在かもしれません。しかし、その材質や加工方法、取り付け方ひとつで、建物の性能や見た目、さらには維持管理のしやすさまで左右される、とても重要なパーツです。

これからリフォームや新築を検討されている方も、「見えないところにこそ本当の技術がある」という視点で、ぜひ建築金物にも注目してみてください。

 

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